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丸井グループの共創サステナビリティ経営

  • M&A研究会ダイジェスト
  • 2022/04/14

青井 浩氏 | 株式会社丸井グループ 代表取締役社長 代表執行役員 CEO

第197回 M&A研究会(2022年3月開催分)ダイジェスト

小売と金融が一体となった独自のビジネスモデルを進化させてきた丸井グループ。近年は、エポスカードを核としたフィンテック事業を拡大し、新規事業領域立ち上げのための人材への無形投資やベンチャー投資を積極的に進めることで、企業価値を更に拡大させています。講演では、事業活動のベースにある『共創』という考え方と、すべてのステークホルダーと共に進める「共創サステナビリティ経営」について、事例を交えてお話いただきました。


信用はお客さまと共につくるもの

家具の月賦商からスタートした丸井は、時代やニーズの変化に合わせて、小売と金融が一体となった独自のビジネスモデルを進化させてきました。業績はバブル経済のピークに最高益を記録した後、バブル崩壊とともに急落し、その後は長い停滞に苦しみました。そして、貸金業法改正やリーマンショックの影響で二度の赤字決算という深刻な経営危機に陥る中、創業の原点を問い直し、事業構造の大転換に乗り出したのが2011年のことです。

「信用は私たちがお客さまに与えるものではなく、お客さまと共につくるもの」―。
創業者の言葉に込められた『共創』という想い。この精神に立ち戻り、商品やお店作りをお客さまとの対話を通して進化させつつ、これまでの商品を仕入れて販売する「百貨店型」の店舗から、テナントにスペースを貸す「不動産型」への転換といった取り組みにより業績は上向きに転じ、コロナ前の2021年3月期まで営業利益は11期連続の増益、同期の一株あたり利益は過去最高益を更新しました。

近年、この「共創」の考え方を、お客さまだけではなく、社員、株主・投資家、お取引先、地域・社会へと拡げ、それぞれとの「共創」活動を展開し、「すべてのステークホルダーの利益と幸せの調和(重なり)」を自らの企業価値と定義しました。ここでいう「幸せ」はサステナビリティとWell-beingであり、この実現を『共創サステナビリティ経営』として、強く推し進めてきました。

サステナビリティは自律的な企業文化から生まれる

私は、サステナビリティとは「本業を通じた社会課題の解決」だと捉えています。この実践のためには、まずは企業文化を、従来の「指示・命令・徹底」を旨とする上位下達型から、より主体的な自主自律型へ変革することが欠かせないと考え、2005年の社長就任以来、様々な施策に取り組んできました。

この一つとしてご紹介するのが「手挙げ」の文化です。
きっかけは、幹部会議でも居眠りする人が後を絶たないことでした。考えた末に辿り着いたのが、会議の「手挙げ」参加制です。会議には希望する人だけを招く、希望者が多い場合には論文審査を通過したものしか参加できません。これで誰一人と寝なくなり、参加者のダイバーシティが拡がったことで活気が生まれ、内容も充実してきました。

手挙げ制の拡張、対話をベースにした場作りといった組織と個人の多様性を追求する継続的な取り組みと、業績に加え行動・成長や意欲といった「バリュー」にもフォーカスした人事評価制度の導入により、15年以上という時間をかけて会社は変わっていきました。

ESG活動の軸は「インクルージョン」

こうして築いた企業文化を礎に、約5年前にESG専任部署を設置し、その活動を本格化させました。活動の軸としたのは「インクルージョン」という姿勢です。「これまで見過ごされてきたものを包含し、取り込む」という言葉の意の通り、「すべてのステークホルダーの幸せの調和を目指す」という、自らの方向性を体現するものです。インクルーシブな店舗・商品開発、RE100への賛同といった活動と積極的な開示により、国際評価機関からの評価は小売業として世界1位へ、そして15年3月期以降、株価の伸びが利益の伸びを上回る、いわゆる「ESGプレミアム」も拡大しています。

オランダの先進企業から学んだサステナビリティ経営

ESGがどちらかというと株主の要望に応える受動的なものだとすると、サステナビリティはすべてのステークホルダーに向けた、より主体的なものだと考えます。本場であるオランダの先進企業を訪ねた私達は、長期的なビジョンの必要性を学びました。

「手挙げ」で集った社員と議論を重ねて作成した、2050年を目標とする長期ビジョン。自らのミッションを明らかにし、世界中の上場企業で初めて、将来世代をもステークホルダーとして明記しました。そして、昨年には財務指標とともに、サステナビリティとWell-beingに関わる目標を「インパクト」として設定し、各領域の専門家を取締役に迎え入れるという大胆なガバナンス改革を行いました。また、利益とインパクトを両立させるため、社内からのイノベーションの創出をめざす「新規事業投資」と、社外とのコラボレーションによるイノベーション導入を図る「共創投資」の両面から投資を拡大させていきます。

今後は、サステナビリティの主要なステークホルダーになる将来世代との共創を強化しつつ、社内外に開かれた『共創のプラットフォーマー』へ、丸井は更なる進化を続けていきます。

パネルディスカッション

かねてより弊社会長の渡辺は、「青井さんの講演は心が洗われる」と講演を楽しみにしておりました。これまでの交流もあって、柔らかく活発な意見交換が行われました。

■ディスカッショントピックス
・将来世代をステークホルダーに含めようと考えたきっかけ~グレタ・トゥーンベリさんの国連スピーチ~
・丸井のDNAである「信用の共創」の成り立ち
・目に見えない「信用」の価値を考える
・小売り出身の金融業だからこそ持てる感覚とは
・コロナ禍は「お取引様とのパートナーシップを強化する試練」と捉える
・「社員と社員の家族から寄せられた喜び」が、経営に気づかせてくれたこと
・well-beingとは何なのか~適切な選択肢と自己決定が鍵~
・ベンチャー投資先の選択基準~最後は「人」に投資する~


M&A研究会とは

法人向け有料会員制(月5万円 税込)のフーリハン・ローキーM&A研究会(旧GCAクラブ、以下「M&A研究会」)は、M&A関連の知識、実務を広く共有していただく場の提供を目的として、2005年11月の設立以来、数多くの企業様にご愛顧いただいております。

各会員企業様毎にフーリハン・ローキーの担当者を配置し、M&A関連の各種ご相談を承っております。現在、メーカー、IT、小売、サービス等多種多様な業界のリーディング企業を中心に、多数ご入会いただいております。

フーリハン・ローキーのプロフェッショナルに加え、M&Aに関連した法務、会計、税務等の専門家や実務経験豊かな経営者などのゲストスピーカーを講師に招いて、毎月M&A研究会セミナーを開催しております。

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【お問い合せ先】
M&A研究会事務局
お電話(03-6212-7388)または問い合わせフォームよりご連絡ください。

記事監修
この記事を監修している弊社担当者です。記事内容に関するコメントやご質問がございましたらコメントフォームよりご連絡ください。記事監修担当より直接ご連絡差し上げます。
岩田 恵美子 Emiko Iwata

広報室長 / M&A研究会事務局

広報業務全般およびM&A研究会の運営を担当。
当社入社の前は、プライベートエクイティファンドの創業に参画。第1号ファンドのレイズ、および設立会社とファンドのオペレーション体制の構築全般を担当。メガバンクを中心とした機関投資家向けインベスター・リレーションズ(IR)や、自社の管理運営に関する企画立案とその推進などに従事。それ以前は、ベンチャーキャピタルにて、人事部、投資企画部などの経験を経て、2000年より新規事業のバイアウト投資に関与。

埼玉大学経済学部卒業。ジャフコ、J-STARを経て、2009年/当社入社。

中西 真紀 Maki Nakanishi

コーポレートスタッフ / 『Compass』編集チーム

大学卒業後、大手ガス会社へ入社し、人材開発や新規事業開発、広告宣伝等を担当。その後、慶應義塾の社会人教育機関を経て、当社入社。『Compass』編集メンバーとして当サイト運営に携わる。本記事の執筆を担当。

北海道大学法学部卒。2012年/ 当社入社。

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